“育てる”を仕事に
〜農業での働き方(就農)〜
農業の仕事といえば、
“自ら農家として個人経営で畑を耕して”
というイメージが強く、始めるには少しハードルが高いと感じている人が多いのではないでしょうか。
実は、農業での働き方は、そういった「独立農業」だけではなく、農業法人の従業員として働く「雇用農業」という方法もあわせてご紹介していきます。
また職種も、6次産業化などの取組みによって、多種多様に広がった“農業界のいま”をご紹介します。
就農の方法は「独立就農」と「雇用就農」
「独立就農」とは
「経営も含めて農業で生計を立てていきたい」と考える人も多いでしょう。
自らが個人事業主や法人代表となり、事業を興して農業を営むというかたちの独立就農。
独自の裁量で経営を行うことができ、ブランド作りや新しいアイデアなどが活かしやすいというメリットがあります。
“新規就農”といえば、このパターンを連想される方が多いのではないでしょうか。
この場合、ほかの業種や事業と同様に、まず事業を営むための資金や設備を準備することが必要になります。
家族経営体の後継者となる場合は、土地や設備など事前に必要な経費は抑えられますが、
自ら新規で農業を営もうとした場合には、まず生活基盤となる住居を準備し、農地や設備を手配・調達するというところからのスタートです。
資金面などの調達は、「農業次世代人材投資事業」や「無利子資金制度」などの国の支援制度をを活用するという方法がありますが、農業は、作物がすぐに収穫・出荷できるものではありませんので、当面の生活資金も準備が必要です。
農地や農業用水・機械・施設などの準備を整え、いざ栽培となった場合には、技術やノウハウが必要となり、収穫後の販路の確保もふまえて事前に準備しておく必要があります。
「雇用就農」とは
独立就農とは違い、“農業法人に就職”して、従業員として農業で働くというかたちの雇用就農。
法人規模は、従業員数人から数百人の大規模企業まで幅は広く、住宅や社員寮などを完備している法人も多く、一般企業と同様に、社会保険などにも加入することができ、安定した収入を得ながら、知識やスキルを高め、経験を積めるという魅力があります。
独立農業のように初期投資(資金)を必要とせず、まずは学ぶことから始めることができます。
就職後経験を積んだのちに独立をするという道も珍しくありません。
新規就農者のほとんどが未経験からのスタートで、雇用就農から始めるスタイルが一般的になっています。
完全に雇用をうけて働くスタイルではないですが、“学びながら働く”というかたちもあります。
例えば、農業法人で就業体験ができる“インターンシップ”に参加するということから始めることもできます。
また、地域おこし協力隊(地方自治体が都心部に住む人たちを、地域活性化のため新しい住人候補として募集する制度)の募集要項のなかに、就農を支援する団体もあります。
期間は定められていますが、就労研修として学びながら給料が出て社会保険も付きます。期間満了後に独り立ちできる研修プログラムが組まれることも特徴です。
広がる農業の職種
「6次産業化」によって広がる職種
“食に対する「安全・安心」”という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。農業が属する第一次産業は、税制優遇や他産業からの参入を防ぎ、ある種「国から守られた産業」として、生産に集中する環境を中心に成り立ってきました。
しかし、生産しか行わなかったことによって、生産者は徐々に経営から離れていき、JAや他産業に経営を委ねるようになっていきました。
あわせて、他産業からの参入もなく、技術変革も起きづらく保守的な産業環境となってしまい、生産しか行わないことにより、「3K(きつい・汚い・稼げない)産業」とまで呼ばれ、だんだんと就農者の数が減ってきたという課題を持つようになりました。
海外からの輸入品も増え、国内での消費低迷から食品需要も減るなどの課題もふまえて、もう一度、“第一次産業を魅力的な産業にしよう!”と始まった取り組みが【6次産業化】。
6次産業化とは、「1次産業×2次産業×3次産業」1次〜3次産業を掛け合わせた言葉で、
農業などの生産者(1次産業者)が、食品の加工(2次産業)し、流通や販売(3次産業)までを行い、利益を高めて“稼げる産業”にしていこうというものです。
(6次産業化という言葉:東京大学名誉教授の今村 奈良臣(いまむら ならおみ)先生が提唱した造語)
“食に対する「安全・安心」”という面においても、「生産者の顔や個性が見える」という点や、「ブランド化・差別化された商品」・「生産者から直接購入できる」という安心感から、6次産業化が加速しています。
産業の幅の広がりによって、今まで栽培や飼養といった生産の仕事が中心だった農業界では、加工や製造における工程での職種や、販売や営業・運搬といった職種も増えています。
また経営の幅も広がったことによって、一般企業と同じように、経理や管理の職、広告宣伝やWeb関連の仕事にまで広がっています。
6次産業化だけでなく、“AI”や“IoT”などのテクノロジーが農業界にも導入されており、今までとは違った生産工程、扱う機材にも変化があり、技術者までもを必要とする「職種の広がり」をみせています。
今まで“畑違い”とされてきた分野の知識やスキルでも、これからは幅広く農業に携わることができるようになっています。
さまざまな職種の角度から、農作物を育てることに携わりつつ、農業界全体を“育てる”ということを仕事にしてみませんか。